「数」の手前にあるもの
私が下川町に移住したのは2003年のことです。それから20年以上ひとつの町で暮らしながら、約10年移住の現場に立ち続けてきて、いちばん強く感じてきたのは、「移住者数」という指標だけでは決して見えてこないものがある、ということでした。
北海道は、179市町村のうち6割以上が消滅可能性自治体に挙げられています。だからといって、人を呼び込めば解決するわけではない。むしろ、急いで人を集めようとするほど、地域も移住者もすり減っていく場面を、私たちは何度も見てきました。
足りなかったのは、「迎える側の体制」だったのだと思います。
「受け皿」を、ともに整える
ミッションを設計する。相談窓口をひらく。来てくれた人と関わり続ける。そして、暮らしへと自然につないでいく――そうした営みが地域に根づいていれば、移住は「成果」ではなく、地域の循環の一部になっていきます。
私たちが「地域を主語にする」「続いていく暮らしを意識する」「集合知を活かす」という三つの原則を掲げているのは、この現場感覚から生まれた確信があるからです。外からの正解をあてはめるのではなく、地域に意思決定を残したまま、その手元の体制を一緒に整えていく。それが、私たちの仕事の出発点です。
ひとつの町の知を、北海道全体の財産に
「移住のすゝめ」は、下川町・ニセコ町・喜茂別町という、規模も地理もまったく異なる三つの現場で歩んできたコーディネーターが集まって立ち上げた団体です。
それぞれの町で重ねてきた工夫、うまくいったこと、そしてたくさんの失敗。それらを「自分たちの町だけのもの」にせず、地域を越えて持ち寄り、整え、また現場に返していく。そうした循環のハブでありたいと考えています。
ひとつの自治体が、すべての専門性を内製するのは現実的ではありません。だからこそ私たちは、地域にとっての「最初のお医者さん」のような存在でありたいと思っています。課題に伴走し、必要に応じて専門家へつなぎ、地域の人たちが自分たちの言葉で語れるようになるまで、一緒に走り続ける。そんな関わり方を大切にしています。
続いていく関わりへ
人と地域は、出会った瞬間ではなく、関わり続ける時間のなかで、互いに少しずつ変わっていきます。
その時間を、もっと丁寧に設計できる社会へ。
地域で生まれた関わりが、その先の暮らしへと続いていく。
そんな景色を、北海道から、ともにつくっていけたら嬉しく思います。


